2017年11月21日
仙台整体コラム 怪力乱神を語らず「断食と整体」2
前回から続きます。前章は「断食と整体」をご覧ください。
人は本能的に糖質を欲する?
私たちの体は糖質を主要なエネルギーとしています。糖分は体の中で煩雑な経路を辿ることなくスムーズにエネルギーにすることができるので、人間に限らずこの地球上にある生物は一般に糖分を好みます。
味覚を考えてみても「甘いものが嫌い」という人はあまりいませんよね。酸味や苦味は学習する味覚ですが、甘味は学習する必要がない味覚です。どんな赤ちゃんだって酸っぱいものは食べられなくとも甘いものは好みます。これは植物だってそうですし、犬や猫、昆虫もそうですね。
「甘いものが苦手な人だっている」という意見が聞こえそうですが、それで糖分が嫌いだということにはなりません。甘いものは苦手でもご飯やパン、パスタ、うどん、そば、ラーメンなどが嫌いな人はなかなかいません。炭水化物は糖質が食物繊維と一緒になっているだけで糖分と同じなんです。
とりわけ大脳が発達した人間様は脳がかなりの糖質を必要とします。人間が糖質を欲するのは脳が糖質を欲するからです。
脳は糖質だけを栄養とすることができるというのが一般的に言われています。実は事実ではありませんが、そういう風な誤解が蔓延しています。
人間の体は常に飢餓に晒されて来た長い歴史がありますから、素早くエネルギーとなる糖質を求めるのは自然で、その行動は本能的なものだということはできるのですが、人間は実は本能のみで行動を決定していない動物です。
発達した前頭葉は非力な人間にとって野生を生き抜く強力な武器でした。前頭葉の持つ予測と推量という人間独自の能力です。
人間にとってもはや「食欲は本能にあらず」
文明、文化を作り出して来た人間は形而上の物事を考えることができます。しかし、それは誤解を恐れずに言えば、時に「妄想」を現実のものと思い込むことに繋がります。
それは必要量以上の糖質を欲する「脳の妄想」を生み出しているのです。
余剰の糖質は主に脂肪として溜め込まれていきます。そもそも余剰の糖質というものは飢餓と戦う長い人類史の中では特殊な僥倖ともいうべき事態だったのです。
糖質が補給されると麻薬的な快楽が得られます。これは他の動物もそうですが、人間はとりわけそれとそれを予想することによって得られる快楽も強いのです。そして快楽に依存します。
これはもはや精神的な依存症とも呼べますし、中毒なのです。
文明の発達に伴って手軽に糖質が得られる理想の世の中を手に入れた人間は「糖質の中毒になった脳の声」が「身体の声」を無視して肥大化していきます。
人間にとっては「食欲は本能にあらず」。単なる栄養補給の手段ではなく快楽と娯楽を追求する側面がどんどん強くなります。
そしてそれは本来我々が持っている自然治癒力や環境適用の能力を退化させることに繋がっていくのです。
体質改善の鍵はケトン体にあり
人間の脳は糖質だけを栄養とするというのは実は誤謬です。
人間は肝臓などに溜め込まれた糖質を使い切った後、筋肉などのタンパク質から糖質を作り出します。これを糖新生と言います。
脂肪はなんの役割をするのでしょうか。脂肪は脂肪としての働きしかないとすれば、人間はなぜ余剰分の栄養を脂肪という形で溜め込むことにしているのでしょうか。
糖質が確保できなくなった際に筋肉などのタンパク質から脳に必要なものを合成するのであれば余剰のものをもっと筋肉として溜め込むことになってもいいはずです。
人間が飢餓状態に陥った時、溜め込んだ脂肪はどういう働きをするのでしょうか。
ここで登場するのがケトン体(アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)です。
脳の栄養は糖質だけというのは実は誤解で脂肪が分解されて肝臓で合成されるケトン体も脳でエネルギー源として使われます。筋肉やそのほかの細胞のエネルギー源ともなります。
実はこれまではケトン体とは血液を酸性に傾けるため、体にとって悪いものだという考え方が主流でした。
しかし、最近の医学ではこれが完全な間違いであることが分かってきています。
もちろん糖尿病などの分泌障害その他の病気によって引き起こされるケトアシドーシスなどは危険ですが、健康な人間が節制することによって起こる生理的なケトーシス状態は全く問題がなく、またそればかりか身体を健康に保つのに貢献するのです。
まさに体質改善の鍵はケトン体にあり!なのです。
神経系を賦活し免疫力を高め身体の炎症を抑えるケトン体
ケトン体の一つであるβヒドロキシ酪酸は神経伝達物質として働きます
少々難しい話になりますが、短鎖脂肪酸が結合するGタンパク共役型受容体に結合して
この受容体を発現している細胞にシグナルを伝達するのです。
世界一のテニスプレイヤーであるジョコビッチはグルテンアレルギーを指摘されて以降、グルテンフリーを実行し、結果的にケトジェニックの状態となり、その後グランドスラムを達成することになります。脳で使用するエネルギーをケトン体に置き換えることで集中力も増したと言います。
またHCAR2(GPR109A)という脂肪細胞に多く発現している受容体に結合すると脂肪の分解を抑制して血液中の脂質量が減ります。
中性脂肪値などを下げるために服薬をするくらいならば一度ケトジェニックな状態を作り出してみるべきです。
さらに当院にも数多く訪れる原因不明の炎症性疾患にも生理的なケトーシスの状態を作り出すことはとても効果があります。
HCAR2はマクロファージなどの炎症に関与する免疫細胞にも発現しておりβヒドロキシ酪酸が結合すると 炎症が抑制されます。
一方 FFAR3(GPR41)という交感神経節の神経細胞に発現している受容体は
中鎖脂肪酸が結合すると 代謝を活性化しますがβヒドロキシ酪酸が結合すると交感神経活性化を抑制し 結果として代謝を抑制します。さらにインフラマソームという体内のコレステロール結晶や尿酸の刺激により炎症を惹起して慢性炎症に関与するタンパク質複合体の主要成分であるNLRP3という物質を抑制して炎症を抑えます。
適切な断食を行いケトン体回路が復活し、ケトジェニックな身体になることで不定愁訴が消失する例がとても多いのです。
長年の服薬による副作用は主に脂肪に毒が溜まっています。脂肪を分解してエネルギーとするケトジェニックな状態はデトックスという観点からも非常に有効な整体なのです。
ガン細胞の栄養として糖質は欠かせないものです。ガン細胞はミトコンドリアが不完全なものが多いのでケトン体を栄養として使えません。ケトジェニックな状態を維持すると、結果として兵糧攻めにできます。100%ではありませんがガンに対しては基本的にケトン体を出す食事が基本となります。さらにケトン体は遺伝子の発現にも関与していることが最近わかってきました。その話はまた次回です。。。
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