株式会社医道研究社

仙台整体日誌:「あ、その学生は私です」

完全予約でお待たせしません! 交通事故治療相談24時間受付!

仙台整体日誌:「あ、その学生は私です」

仙台整体日誌:「あ、その学生は私です」

2025/02/15

先日、柔道整復師の国家試験を控えた学生さんが首肩の痛みで治療に訪れたのだが、そこで20数年ぶりの我が子を見るような気持ちになる出来事があったのでご紹介。

 

「あ、その学生、私です」

 21世紀最初の年、東京での長い大学および大学院生活を終えて帰郷した私は翌年からまた学生に戻ってしまった。

昼間仕事をしながら柔整師の資格を取るために夜学に通うことになったのだ。

学位なんて持っていても腹の足しにもならない。しかも芸術学の学位など犬も食わない。

アカデミズムから飛び出して市井で伸び伸びと仕事をして技術者として人と関わりたいと思った。

なによりお金をいただいていながら「ありがとうございます」って感謝される仕事に就けるなんて素晴らしい話じゃないか(笑)

 

ま、それはさておき、夜間部なので若い人もいれば私と同年代もいるという、とにかく様々な境遇の人がいた。まがりなりにも大学時代と院での研究生活で本ばかり読んできたので勉強は苦にならなかった。さらには、これは著書にも少しく書いてあるが、家業が家業なので、解剖学、生理学などは既存の知識が多くて助かったのもある。

 

ただ、非常なるスパルタで有名な東北大のI教授の授業はなかなかに手強かった。全身の骨格と筋、作用と支配神経を覚えるのは当然だが、その接合全てを細かいところまで3次元的に〝文章で説明することができるようになる〟ことが求められた。顔面頭蓋などの細かいものも全てである。定期テストは赤点者続出であった。

 

今思えばこういう授業を展開してくれる師はとてもありがたい存在である。鉄は熱いうちではないが、出来るだけ脳が若く柔軟で吸収力が高いうちに徹底的に詰め込むプレッシャーを与えてもらえるというのは貴重なのである。

 

とまれ、有難いのは良いが、実は我が母校は再試の受験者から一教科あたり金を取るというなかなかのゼニゲバであった。大学ではそんなことは考えられないので最初は少し驚いた。おかげさまで私はそういう憂き目にあうことはほとんど無かったが、周りの同級生たちの少なからずのものから阿鼻叫喚が聞こえた。自分に甘く他人に厳しい私は「ひたすら喉から血が出るくらい声に出して叫ぶのじゃ!そんなこともできぬお前は他人様の体に触る資格はないわ!」などど嘯いていたのだが、追試で3日分のバイト代が飛んだとという話をきくと少しかわいそうになってきた、1年生からそれでは先が思いやられる。なかにはしっかり頑張っているのに試験では緊張してしまい実力を発揮し損ねる友もいた。

 

そこで、解剖学や生理学の諸所要点を覚えやすいよう工夫して、そのアイデアを共有しようと思った。

色々あるが、とりわけ評判が良かったのが「散々名古屋で後藤さん、とうとう55歳」というもの。

これだけ聞いてもなんだか良く分からないだろうが、これが中々の呪文なのである。

 

人の神経は主に2系統に分けられる。脳から直接出ている脳神経、そして脊髄から出ている末梢神経である。

脳神経は12本あって1番の嗅神経から始まって12番目の舌下神経で終わる。

この順番などは古今東西、様々な語呂合わせが考えられており、私は使ったことはないが皆口々に唱えていた。

ただこの脳神経、それぞれ含まれる神経の種類が異なるのだ。感覚神経、運動神経、副交感神経。感覚神経だけのものもあれば、感覚神経と運動神経の二種類が含まれていたり、運動神経と副交換神経のもの、全部混合のものなどもある。

それは語呂合わせなどしようがない。むしろそのまま覚えてしまう方が楽だ。実際、神経の名前と作用をじっくり考えれば推理はできる。しかし、テストなどでは疑心暗鬼になり迷う場合もでてくるだろう。

そんな時でもこの呪文さえ唱えれば大丈夫なのである。

 

この「散々名古屋で後藤さん〜〜」という文章は〝3.3.7.5.8.5.10.3.10.10.5.5.〟という数列を表している。

3は感覚神経、5は運動神経、そしてそのままの数字としては出てこないが副交感神経を2とする。

どういうことなのかを解説すると。。。。

 

脳神経    

嗅神経     1番  3(感覚神経3)        

視神経     2番  3(感覚神経3)  

動眼神経    3番    7(運動神経5+副交換神経2)

滑車神経  4番    5(運動神経5)

三叉神経  5番  8(運動神経5+感覚神経3)

外転神経  6番  5(運動神経5)

顔面神経  7番  10(運動神経5+感覚神経3+副交感神経2)

内耳神経  8番  3(感覚神経3)

舌咽神経  9番  10(運動神経5+感覚神経3+副交感神経2)

迷走神経  10番 10(運動神経5+感覚神経3+副交感神経2)

副神経   11番 5(運動神経5)

舌下神経  12番 5(運動神経5)

 

この数列の数字はそれぞれ含まれている神経繊維の種類を表しているのである。

感覚神経ってなんだっけ?となっても初めのほうの嗅神経と視神経は感覚なのだから3だとわかる。

運動神経って?滑車や外転神経は運動するんだから5に決まってる。

7は5と2の組み合わせしか考えられないし、8も5と3の組み合わせしか考えられない。我ながらよくできたもんである(笑)

 

これはかなり好評で東北大のI教授にも「へぇ君が考えたの?面白いね。こりゃ使えるよ」とお墨付きをいただいた。

家内が鍼灸科だったのでそこでも広まった。

 

ここで最初の話に戻るのだが、治療が終わり、最後にこの呪文を土産に持たせてあげようと「散々名古屋で〜」と言いかけた時、「あ、それで覚えさせられてます!」という意外な返事。

「どこで聞いたの?」

「学校の先生も言ってましたし、youtubeとかネットでも紹介されてて、全国の人知ってるんじゃないですか?」

 

なんと!確かにサッと確認したら理学療法士の受験サイトでも紹介されている。しかし、そこでは「さぁさぁ名古屋後藤さん」となっている。伝言ゲームみたいなもんで変わったのか、それともこの紹介者が改変したのだろうか。

 

しかし、わかっとらんな。これは「散々名古屋で後藤さん」だからいいのである。ドラマがあるのである。散々名古屋でブイブイ言わせていた後藤さんも不惑も超えて天命も超えてとうとう55歳だよ、四捨五入したら還暦だ。昭和のサラリーマンなら定年だよ、波平さんの歳も超えたんだよ。人生はあっという間だねというペーソスがあるから脳裏にこびりつくのである。

 

などと感慨に耽っていると、患者さんが言った「昔、どこかの学生さんが考えたみたいでぇ」

そこで私が咄嗟に答えた

 

「あ、その学生、私です」

 

あおとがよろしいようで。

患者さん、とても驚いていたが、なにより驚いていたのは私で、隣で聞いてたカミさんも目を丸くしていた。

 

----------------------------------------------------------------------
伊東鍼灸整骨院
宮城県仙台市若林区清水小路5-6 エステート五橋1103
電話番号 : 022-266-5234


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。