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解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❸ 第1章「身体と構造の力」の1

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解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❸ 第1章「身体と構造の力」の1「構造の力」

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❸ 第1章「身体と構造の力」の1「構造の力」

2025/09/03

Ⅰ 身体と構造の力

「君の思想と感受の背後に、一個の強力な支配者、知られない賢者がいるのだ、─その

名が『本来のおのれ』である。君の肉体のなかに、かれが住んでいる。君の肉体がかれ

である。」

 

構造の力

人間の直立を可能にしている脊柱の生理的弯曲。それが持つ「構造の力」について考えてい

ると、思い出す話があります。これは2001年のアメリカ同時多発テロにまつわるものです。

夜更かしの多くの皆さんと同じく、私もたまたま二機目の激突を生中継で見ていました。夜

の日本での「白昼の航空機激突生中継」に全く現実感が湧かなかったのをよく覚えています。

数十分後、現代技術を駆使したビルは神の怒りに触れたバベルの塔のごとくにあっけなく崩壊

してしまいました。この崩壊については様々な検証が行われており、一応の報告も出されまし

たが、いまだに不明な点も多く、今後もその謎解きが語られていくのだろうと思います。標的

となったWTC(世界貿易センター)はその8年前の1993年にも爆破テロにあっています。

その際は、地下駐車場での爆発で6人の犠牲者と1040人の負傷者を出しました。これも悲

劇的な事件でしたが、後のビル大崩壊と比べると被害は極めて限定的なもので済んだのです。

その限局性から後の同時多発テロの予行演習的なもの、消防、警察、軍がどのように動くかな

どの情報収集のためのものと考えられました。しかし、その後の捜査によって、実はこの爆破

犯は地下を爆破することによってタワーを倒れさせ、2つのタワーを崩壊させることを企図し

ていたことが明らかとなりました。犯人はオサマ・ビンラディンを首謀者とするアルカイダと

オマルアブドルラフマンを首謀とするイスラム集団だったといわれます。彼らは「ビルの地下

で爆発させればタワーが崩壊する」と考えていたわけですが、実際にはビルは崩壊しませんで

した。それどころか傾きすらしなかったわけです。被害者側が「様子見をしたのだろう」と勘

違いをするほどに軽微な損傷に終わった爆破テロなのに、実行犯達は〝ビルを崩壊させること

ができる〟と思いこんでいた。この感覚の乖離はなんなのでしょう。実は、この乖離には文化

の違いが及ぼす勘違いといったものが絡んでいたのではないかと思います。おそらく、彼らの

頭の中にあった建築物の構造と近代的高層建築物の構造には決定的な違いがあったのです。

 

イスラム建築のアーチ構造

彼らの育った「イスラム世界」は木材が少なく、伝統的に石組みの建築が基本でした。中東

は古代から中世にかけては世界の先進国でした。化学の大事な要素には今でも名残があります。

皆さんご存知のように、頭にアルというアラビア語の接辞がついている化学用語はアラビア語

起源のものが多い。耳に馴染みのあるものでは、酸性、アルカリ性の「アルカリ」はアラビア

語で「海藻の灰」という意味です。また「アルコール」もアラビア語で「酒精」という意味で

す。金属を変質させるという意味の「アルケミー」も「錬金術」という意味で英語に残ります。

 

 また「代数学」のことは「アルジェブラ」といいますが、もちろんアラビア語が語源です。

彼らは石組みの壮大なドーム状の建築なども早い時代から可能にしていました。中東の人々

にしてみたら、ギリシャ哲学も幾何学もしっかりと受け継いでヨーロッパに教えてやったのは

我々だという自負がどこかにあるのです。「我々が教えなければ石工のギルドであったフリー

メイソンも偉そうにできなかっただろう」なんて考えているかもしれません。そんな進んだイ

スラムの建築にはアーチ構造がふんだんに使われていました。アーチ構造は皇居の二重橋や長

崎の眼鏡橋、また東京駅から神田駅までの高架など明治初頭に作られたものが現在でも使われ

ているのを見ることができます。このアーチ構造は石の形と組み方だけで力を分散させて強度

を出すという、まさに「構造の力」を利用したものです。このアーチ構造が古い中東の高層建

築物には床の構造として利用されていました。

アーチ構造は上からの荷重にはとても強いのですが、下からの力には非常に弱いという特性

があります。上からはかなりの重量や衝撃に耐えることができます。構造上、たわむこともあ

りません。むしろ重量によって構造が安定するわけです。しかし下から突き上げる力にはすこ

ぶる弱いのです。この方向から力が加えられた場合、少しの衝撃でもあっけなく崩壊してしま

います。壁も床の構造力に依存していますから、床を抜けばビル全体の崩落に繋がることにな

ります。

 かつての中東では要人暗殺などをする場合、爆弾を同じ階に仕掛けずに下層階に仕掛けたと

いいます。下方からならば小さな爆風でもビルを崩壊させることができるからです。崩壊まで

至らずとも床(犯人から見たら天井)を抜くことはできるわけです。WTCの地下駐車場で爆

破を決行した彼らの頭には、この古いイスラム建築によるビルの構造があったのではないか。

彼らは〝下からの爆風〟でビルを崩壊させようとしていたのではないか。しかし、それは果た

せませんでした。彼らは近代建築について学習し、8年後、今度は真逆の方法、つまり、上か

らの攻撃によってWTCを崩壊させたのです。近代の高層建築物は弱点を無くすためにあらゆ

る角度からの補強が行われています。倒すとすれば、最低、構造と材料の2点を攻めなければ

なりません。そして決め手として〝重力という力〟を最大限に使うのです。この場合は、航空

機によって上層階の広範囲に対する一瞬での構造の破壊があり、その後の航空機燃料による火

災で高温の炎が鉄骨の変性を招き、さらに重力がかかることで、下層階の鉄骨の座屈の連鎖が

始まり、瞬く間に崩壊してしまいました。

構造建築士のプロの方に話せば一笑に付されるかもしれない妄想ですが、あり得ない話では

ないと思うのです。構造の力は正しく使えば素晴らしい力を発揮しますが、その構造が狂った

り、間違った使い方をすれば本来の強度を活かすことができないという逆説的な見本です。

 

 この話は、構造そのものが持つ「力」に気づかせてくれるだけでなく、世界観や文化による

思いこみ、思い違いといったものを考える契機にもなるのではないかと思います。これは人間

の身体構造についても同じことがいえます。私たちの身体構造も正しい使い方をすれば、とて

もしなやかで、勁 つよいものですが、間違った使い方をしていれば、いずれ何らかの愁訴に見舞われることになります。また、私たちは観念による素朴な勘違いをしがちです。私たちは漠然と「偏りのない身体が正しい」「左右差のない身体が正しい」と思っています。

しかし、それは単なる思いこみに過ぎません。これは人間の持つ観念による勘違いなのです。現代の私たちは観

念的になりすぎて、身体における構造の重要性、いや、むしろ身体そのものについてすら忘れがちになります。

 

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✳️一言解説

 

とあるレビューで扉のニーチェの箴言にいちゃもんをつける人がいた。

そういう人は反知性主義のようなイデオロギーに染まっていて、そのくびきについて思いを致せなければ、おそらくこの本を完全に読めない。

何故ならばこの第1章で伝えたいことはこの一文で示されているからだ。

理性や知性の出所が精神や頭脳にだけあって、肉体はその付属物に過ぎないのだという思い込み。そんな「近代的理性の誤謬」をさまざまな例を挙げて論じているのが本書なのだから。私たちの肉体やその構造と精神は不可分だ。これは何も突飛な話ではない。そもそも、うつ病に代表される「心の病」だって脳内物質云々で語られていることを考えてみたらいい。これはもはや心的な病を構造の問題として語っているわけで、私は身体の骨格構造と脳とのフィードバックについて語っている。これは、同じ地平のものだが、なぜかそれらが忘れられてしまうという問題を論じているに過ぎない。

その部分が理解できれば、この冒頭の箴言はなんら抽象的なこけおどしではなく、非常に具体的でありながら簡潔に事象を伝えていることがわかるはずだ。

 

ちなみに、これは手塚富雄氏の訳によるもの。

 

 

 

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