株式会社医道研究社

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❹ 第1章「身体と構造の力」の2「人間は左右対称ではない」

完全予約でお待たせしません! 交通事故治療相談24時間受付!

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❹ 第1章「身体と構造の力」の2「人間は左右対称ではない」

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」❹ 第1章「身体と構造の力」の2「人間は左右対称ではない」

2025/09/10

人間は左右対称ではない

 

自然の左右バランスは偏っている

 

 人間がこの地球上に誕生してから、左右の脚の長さが同じであったことは恐らくありません。

自然界のほとんどの事物は厳密にいえば対称なものは存在しないのです。私たちはそれぞれに

自然環境に適応して生きています。歪みのない、完全なものがあるとすれば私たちの頭の中だ

けなのではないでしょうか。それは観念の世界のお話です。古代ギリシャの人々は「イデア」

という完全な世界を想起しました。完全な円や三角形、そのほかの事物は、「イデア」という

私たちが住んでいる世界とは次元の違う場所にしか存在しないといいます。この世の全てはそ

の完全なる世界の「模造品」に過ぎません。どうやら「真理」というのもそこにあるらしいの

ですが、そういったものを言葉で説明する学問のことを哲学といいます。その意味で、哲学が

考える「自然」とは実は「不完全なもの」だということになります。

そのように〝不完全な自然〟である私たちのいる世界においては、ほとんどの物が何かしら

の環境の影響を受けて歪みを持っています。私たちの周りにある最も身近な自然である「身

体」もまた例外ではありません。丸いと思っている地球も真円ではありません。自転の遠心力

で横に膨らんでいます。そんな楕円の凸凹の物体の上で進化してきたのが人間という動物です。

そして赤道や極にいるならまだしもですが、私たちは地球上でも北半球の真ん中あたりの中途

半端な局面上で暮らしてきています。

地球の自転と重力との力の方向に関係して起こる慣性力のことを「コリオリの力」といいま

す。「フーコーの振り子」の動きに、この「コリオリの力」を見ることができます。実はフー

コーの振り子を使わなくともこの力の働きは身近な生活で観察することができます。排水口に

流れる水は渦を巻きますね。フーコーの振り子とは逆に北半球では渦は左に巻き、南半球では右巻きです。赤道では渦が巻きません。

知らない間に私たちには対称とはいえない大きな力がかかり続けているのです。私たちはそんな地球で暮らし続けてきました。

脚の長さの左右差

股関節の角度と骨盤の変位による脚の仮性延長と仮性短縮というのがあります。特殊な事情

がない限り、左足が1センチ程度短いのは普通のことです。そもそも本当に骨が短いわけでも

ありません。これを仮性短縮といいます。

 

人間の骨盤は4種類の骨から構成されています。

腸骨1対、坐骨1対、恥骨1対、そして仙骨という5個の椎骨が1つに癒合した骨が1つ。

腸骨、坐骨、恥骨は成人ではひとかたまりの骨になっており、それらをひとまとめでいう場合、寛骨といいます。

寛骨の腸骨部分は仙骨と関節を作っており、それを仙腸関節といいます。

 

この仙腸関節はほぼ平面同士で合わさる半関節といわれており、整形外科学ではその動きをあまり重要視されているとはいえない関節です。

しかしこの関節は人間がバランスをとる上で非常に重要な役割をしています。また生理学的にも示唆に富んだものがありますが、それについては後述します。

 

また寛骨は前面下方の両側の恥骨同士が繊維性の弾性軟骨で結合しています。

股関節を形成する大腿骨頭は頚体角 というものを持っています。関節窩に向かって内方に

135度の角度で曲がっています。

ほとんどの人の脚の長さはこの骨盤の微妙な変位と骨頭の関節窩への嵌り込み方の微妙な差

が複合して短縮したり、延長したりします。短縮と延長は相対的なものなので一概にはいえま

せんが、左脚が短縮するのは問題がない場合が多いです。

 

私の治療院に来る患者さんはほとんどが、差こそあれ厳密には少し左脚が短く見える人がほ

とんどです。そうではない場合、実は愁訴が重いことが多いのです。これには、人間の身体バ

ランスの構造的適性が絡んでいますが、それについても後述します。

 

脳の左右差

人間の脳は大脳、中脳、小脳、間脳、脳幹などに分けられます。全体の平均重量は1300

グラム程度です。左右差という部分においては大脳です。左脳と右脳とに分けられて間を脳梁

で繋がれています。左脳と右脳は大きさや重量こそ、そんなに違いはありませんが、優位半球

と劣位半球というものがあります。主に言語中枢がある方を優位半球としています。ほとんど

の人は左脳が優位半球で論理的思考などを担当しています。右利きの人の90パーセント、左利きの人でも60パーセント程度は左脳が優位半球です。利き手の割合は大体9対1ですから、ほとんどの人は左脳が優位半球ということになります。そもそも〝利き手〟というのがある時点で対称性はありませんね。道具を持った人間は必然的に半身の役割が変わってきますから。

 

肺の左右差

肺も右肺と左肺に分かれていて、右の肺の方が大きくなっています。

左肺は上葉と下葉、右肺は上葉、中葉、下葉に分かれています。心臓が左の胸壁に押し付け

られる構造になっているので、それを避けるために左肺の体積が小さくなっているのです。右

の肺の方が体積が大きいということもあり、気管は右肺に行くものが太くできていますから、

誤嚥したものは右肺に入り込みやすい。お年寄りの「誤嚥性肺炎」がたいてい右肺に起こるの

はそれが原因です。

 

心臓の位置の左右差

心臓は左胸にあると思いがちですが、実はほとんど真ん中についています。ハート形の先

(心尖といいます)が左を向いているので、随分と左側に寄って見えます。心尖は左の胸壁に

軽く押し付けられる構造になっています。なぜこんな構造になっているかといえば、胸壁に押

し当てることで、運動の支点を確保することになり心筋の運動がより安定するからです。

 

肝臓の左右差

さらに右肺の下には体幹部では最大の臓器である肝臓が控えています。とても重い実質臓器

です。重量は成人で脳並の1300グラム程度です。この肝臓は3分の2が右側にあります。

この大きな肝臓の大部分が右側にあるせいで左右1対ある腎臓は右腎が押し下げられて、左腎

に比べて背骨1つ分ほど下についています。

簡易的なイラストなどには左右対称で描いてありますから、同じ高さについていると思いこ

んでいた方も多いのではないでしょうか。

これだけ見ても人間の身体がいかに左右バランスの対称性を欠いているかが分かりますね。

さらに男性には睾丸が2つありますが、これも左右で大きさが違います。同じ大きさだと圧

迫された時に破裂しやすくなるからだといわれています。

これだけアンバランスだと人形ならば安定して立たせておくことが難しいでしょう。しかし、

人間は主に自律神経系、筋骨格系を駆使してバランスをとっています。

 

人間は左側に重心をおく動物

陸上競技、オートバイレース、競輪。これらトラックを周回するという競技は全て左回りの

設定になっています。それはなぜか、人間は左回りが得意だからです。

これは右利き左利きはあまり関係がありません。左回りの方が記録が伸びやすいのです。

皆さんも自転車に乗ったりするでしょう。右折よりも左折の方がしやすいと思いませんか。

人間は左側に重心軸をおく方が動きやすいのです。

これはなにもトラック競技をしている時だけではなくて、普段何気なく立っている時でもそ

うです。歩いている時でも、座っている時でもそうです。人は左側に重心軸をおくようにでき

ているのです。見た目には分かりませんが、普通の人は立ち姿勢の時に、重心的には「右足を

前に出して休め」の姿勢をとっています。

重心を左足におき、そして右足は少し浮かせています。利き足を浮かせて自由度を高めてお

いた方が、万が一、バランスを崩した際に体を捌きやすくなるからです。股関節は重心側

(左)の方が骨頭が内旋して内側に入り込む傾向があります。親指側に重心がかかるからです。

結果として、先ほど説明した「仮性短縮」になりやすい。一方で非重心側(右)は股関節が外

旋してつま先は外側に開く傾向があります。外股気味になるということですね。右足は外側に

重心が乗りやすいので靴底の外側が減りやすい傾向があります。一般的に重心側(左)は筋肉

が引き締まっていく傾向にあります。一方で非重心側(右)は浮腫みが起きやすくなります。それは外側重心であるためにふくらはぎの伸縮が行われにくいというの理由として挙げられます。右の靴の方がきつく感じることはありませんか。ひどい人は1サイズ変わる場合もあると聞きます。利き足だから成長がよくて右足が大きくなったという話をたまに聞きますが、ほとんどの場合、それは浮腫みのせいなのです。浮腫みといえば、血管以外に身体にはリンパ管という経路があります。主に老廃物の代謝に関わる系統ですが、これも左右で少々違います。

下半身と左上半身が1系統、右は右上半身のみという左右非対称のものになっています。

整体師に脚の長さが違うと言われて悩んでいる方もいらっしゃると思います。しかし、人の

左右のバランスはそもそも対称ではないのです。では、なぜ対称が正しいと思いこんでしまう

のでしょう。それは、人間の美的観念にはシンメトリーを好ましく思う傾向があることと関係

があるのかもしれません。損傷や傷病による構造の病的な歪みは、その個体の生命力に関わる

問題ですから、その感覚自体は私たちの本能的な希求なのかもしれません。遺伝子レベルでは

細胞分裂は完全な対称を理想としていますから、それらも関連しているのでしょう。また、均

衡が平和をもたらすという感覚は、闘いとともに生きてきた人間の感覚としては納得できるも

のです。しかし、私たちは〝不完全な自然〟に適応して進化してきました。その意味で、私た

ちの歪みは自然が要求する偏りであり、歪みなのです。それらを否定してしまっては、行き着

く先は人間そのものを否定することに繋がります。

 

身体の左右差を異常に気にしてしまう患者さんがたまにいらっしゃいます。シンメトリーに

対する病的な固執は、他人よりも身体の歪みを気にしているようでいて、根底には深刻な身体

に対するネグレクトを抱えている気もします。それは潔癖症にも似た心理です。人間という存

在は、微生物との共存なしには本当の清潔を確保できないという事実があります。しかし、そ

の〝ありのまま〟を認めることができない、その態度は自然というものの存在自体を受け入れ

られない心性なのです。

Alex John Beckという写真家がいます。彼は人間の顔の片側だけを切り取り合成した写真

集を作りました。「シンメトリーな顔こそ最も美しい」ということを証明するためにです。し

かし、その結果は意外なものでした。写真集を見たほとんどの人が「片側だけで作った顔では

ない、その人の普通の顔が美しい」と感じたのです。人間は左右のバランスが違うのが自然な

のです。人は観念の迷路に迷いこむと、そんな当たり前にある自然の美しさを忘れてしまうの

です。

 

 

 

※一言解説。

私たちは脊椎動物として5万年の歴史を通じて、種として自然に対する適応をひたすらしてここにいる。自然が左右対称でない以上、私たちもそうなのは当たり前である。ただ、進化というものはどうしても後戻りができないところがあって、大元からの改変アップデートは難しい。その一例は呼吸であって、元々、海から生まれた私たちが陸に上がった時の一番の課題が呼吸システムの変更であった。呼吸は常に行うものであるから疲労することを知らない平滑筋が負うべきところを、構造上、体壁筋で行うことになってしまった。横紋筋は瞬発力があるが持久力に乏しい。また四足から二足に移行する際にも本来行うべきものよりも小さな改変で乗り切ったことで、かなりシビアな骨格構造が求められることになった。それはどうしようもない左右差を許容するためにも必要な構造で、その上で、人は自然な左右差と不自然な左右差を見分ける感覚が本能的に備わることになった。左右差には発生的にも進化的にも理由がある、自然な左右差はむしろ人を安心させる。この微妙な感覚を伝えたかったが、どうだろうか?

 

 

----------------------------------------------------------------------
伊東鍼灸整骨院
宮城県仙台市若林区清水小路5-6 エステート五橋1103
電話番号 : 022-266-5234


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。