株式会社医道研究社

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」11 第1章「身体と構造の力」の9 「構造と脳脊髄液の循環」

完全予約でお待たせしません! 交通事故治療相談24時間受付!

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」11 第1章「身体と構造の力」の9 「構造と脳脊髄液の循環」

解説付き週刊連載「身体構造力〜日本人のからだと思考の関係論〜」11 第1章「身体と構造の力」の9 「構造と脳脊髄液の循環」

2025/10/28

構造と脳脊髄液の循環

脳と脊髄を浮かべている脳脊髄液は絶えず脊柱管の中を循環しています。頭蓋骨から始まって骨盤の真ん中の第2仙椎の辺りまで行って折り返しています。その循環の役割は、脳と脊髄の表面を栄養することと、脳に溜まった熱を冷やすことです。じつに心臓から拍出されるおよそ20パーセントもの血液が直接脳に送られます。血液は栄養と酸素の他に体熱も循環させていますから、脳というのは常に熱が溜まりやすい。しかし、脳はたんぱく質と脂肪でできていますから、熱には非常に弱い臓器です。たんぱく質は42度程度で不可逆性の化学変化を起こしてしまいます。そして脂肪は熱で溶けてしまいます。脳に熱が鬱滞してしまうと、様々な愁訴の原因となるのです。いかに効率よく冷やすか。放熱とは脳という臓器にとって常に大きな課題としてあるのです。その重要な脳脊髄液の循環には、呼吸運動とそれに連動した頭蓋骨および仙腸関節の運動が関わっています。脳脊髄液は脳を衝撃から守るために、比重が重いゼリー状の液体になっているので、スムーズに循環させるには何らかの動力が必要となります。頭蓋骨は呼吸に応じて横に膨らんだり、縦に膨らんだりします。硬膜をワイヤーがわりにしてその力を受けた仙骨も前傾したり後傾することで揚水ポンプのような動きをして降りてきた脊髄液を脳に戻しているのです。この構造的連携がうまくいかない場合、当然、脳の機能に影響が出てきます。脳への熱ストレスは、うつ病や不眠、頭痛、慢性的な疲労感、アレルギー、蕁麻疹、胃腸の障害など、あらゆる愁訴の誘発要因にもなり得るものです。

 

ストレートネックと自律神経、血圧

 

「ストレートネック」とは頚椎の慢性的な歪みの状態を表す言葉で、主に肩こりの原因として、人口に膾炙しています。頚椎がストレート(真っ直ぐ)になると、背骨の「構造の力」が使えなくなります。それを支えるために余計な負担が筋肉にかかり続けてしまう。構造の力を筋肉に依存する状態は、自律神経の興奮や運動によって張力の変化が常にあるので、終始不安定な状態になります。頚動脈には頚動脈洞という圧受容体が存在しており、常に脳に送られる血流を圧力という観点で監視しています。ここに締め付けの力が掛かると圧受容体が血圧上昇と捉え、舌咽神経─迷走神経反射である頚動脈洞反射が起きます。血圧の降下が起こり失神したりするのです。柔道など格闘技の絞め技で〝落ちる〟のはこの反射を利用しています。このことからも、頚椎の歪みによる首の筋肉の異常な緊張状態が自律神経系に影響を与え続けることは疑いようがないものといえるでしょう。

奈良県立医科大学の耳鼻咽喉科教室では、椎骨動脈血流と平均動脈圧および血圧変動の相関関係を調べています。メニエール病や椎骨動脈循環不全における「めまい」などを訴えている患者を対象にしたもので、安静状態で血圧を測り、その後に立ち上がってもらってからの血圧の変動と左右の椎骨動脈の血流速度を調べるものです。原因不明のめまいの患者に椎骨動脈血流の左右差が認められることはすでに話しました。その左右差には自律神経の興奮が修飾因子としてあるのではないかともいわれています。交感神経の興奮状態によって左右差が出ているのではないかということです。血圧は自律神経が関わっていますから、全身の血圧の変動でその左右差にどのような変化があるのかを観察したわけです。メニエール病では変化はありませんでしたが、椎骨動脈不全症に関しては、「血圧の変動で椎骨動脈血流速度の左右差が強調される」という結果が出ました。全身の血圧が上がって押し寄せる血流の量が増えたら、左右の差がはっきりとしてきたのです。これを素直に見れば、やはり「構造の歪みで左右差が起きている」といえるでしょう。交感神経の興奮状態が筋肉の収縮を引き起こして、構造を歪めているともいえますし、その交感神経の興奮は構造の歪みが引き起こしているということもいえるわけです。そこからフィードバックされる血流の左右差の情報は自律神経系にさらに余計な負荷をかけるでしょう。その悪循環は自律神経失調症の引き金にもなるでしょうし、起立性低血圧やその他の血圧の異常にも繋がっている可能性があります。

脳を水平に保とうとして、動的な平衡をとるのが人間ですから、頚椎の生理的な曲率を保てなくなれば、頚椎のどこかで歪みが強調されるのは当然です。構造物に一番負荷がかかるのは境界部分です。それは後頭骨との境の環椎であり、胸椎に移行する第7頚椎になります。大体のストレートネックの方はその部分に特徴的な変位があります。神経学的な問題や、筋肉の硬結による血流の問題などの前に、構造について思いをはせることが大切です。その些細に見える構造の問題が、その人の人生を変えることがあるのです。主に頚椎に焦点を当てて語ってきましたが、これは全身の骨格構造に関わることです。そもそも頚椎の歪みは全身の構造の反映ともいえるのです。頚椎に限らず骨格構造の歪みは様々な愁訴の原因となるのはもちろんですが、人間の気分や思考に確実に影響を与えます。例えば、骨盤の変位によって生理痛が増すことはよく知られています。月経血を排泄するために、脳は下垂体後葉からオキシトシンというホルモンを出して、子宮を収縮させようとします。オキシトシンは乳汁の射出や妊娠時には陣痛をもたらすものですが、愛情ホルモンとも呼ばれて女性の気分や思考に大きな影響を与えるものとしても知られています。このホルモンは分泌が過剰になると愛情の裏返しの攻撃性も出てきますので、気分が昂ぶってしまう傾向があります。子宮は骨盤にぶら下がっていますが、その変位が生理的な範囲を超えている場合は力学的に効率良く収縮ができずに、脳からのオキシトシンの分泌も増えてしまいます。体操競技の種目である吊り輪を考えてください。吊り輪の位置が前後でずれていたら、まともな演技は期待できませんよね。子宮が収縮すればするほど、子宮周囲の痛みが増すのは当然です。骨盤を内側からねじろうとする力が働くわけですから腰痛も起こります。骨盤が動かされ続けることで骨盤から頭までを繋ぐ脊柱起立筋や背中全体を覆う広背筋の緊張も起こりますから、背中の苦しさや頭痛などに繋がってきます。骨盤とは身体の中心ですから、全ての運動に関与します。骨盤の運動の不全は全身の骨格構造にも影響していくのです。それがまた別のストレスとホルモンの失調を引き起こすことになります。人間の感情(情動)というものがどのようにして起こるのかはいまだに解明されていません。様々な説が唱えられていますが、その中にジェームズ・ランゲ説というものがあります。これは「感情は生理要素の認知からくる」と考えるもので、諸説の中では一番シンプルに、身体内部のホルモンのバランスやその他の生化学的要素と感情を結びつけて語っているものです。その根拠の一つとして「女性の犯罪率の変化」が挙げられています。女性の犯罪の62パーセントが月経直前に起こり、月経直後にはそれが2パーセントにまで減少するというものです。このジェームズ・ランゲ説は少々短絡的だとして批判も多いわけですが、身体構造の歪みと人間の情動、感情というものの関連を考える上で無視することはできないものです。女性という生き物にとって排卵とそれに伴う月経のメカニズムは〝生物学的に全てに優先〟されてしまいます。感情の不安定や愁訴はその目的である〝種の保存〟にとっては些細なこととされてしまうのでしょう。しかし、生物に本来的に起こる月経というメカニズムが、まともな生活が難しくなるほどの愁訴を引き起こすわけがないのです。その原因の一つとして骨格構造の不全というものを考えるのは自然なことです。実際、骨格の改善によって、その愁訴が大幅に軽減することも多いのです。

言われてみれば、至極当然のことのように聞こえる話ですが、身体の骨格構造を性格や思想という内面と結びつけて考えようとする試みがなされることはあまりありません。人体をシンプルな構造体として見るという視点が、そのシンプルさゆえに忘れられてしまうのです。その思考では脳内の器質変化の明瞭な観察やホルモンバランスなどを数値化したいわゆる〝客観的な視点〟でしか、愁訴の原因を推し量ることができません。もちろんその視点は重要なのですが、確実な器質変化や数値の有意性だけを判断の基準にしてしまうことは、結果の検証に過ぎません。さらにいえば、現在の日本の整形外科医療における客観性とは本当の客観的視座ではなくて、「健康保険法の範囲内の客観性」に過ぎないともいえます。本来の客観性とは現前する対象の観察とそこから導かれる演繹的な推論によって得られるべきで、とりわけ目の前に患者さんという構造体がいる治療家は、その患者さん独自の構造を観察し推論するべきなのです。現状の医療は高度になっている分、自由な推論と発想が排除されるために、科学的思考を訴えながら、実は逆説的な形で論理的な思考が抜け落ちることがしばしばあります。患者さんの個性とその人体の構造にその因を求めることが示唆されるのは稀です。もはやシステム的に骨格構造を語れない状態になっているのです。

 

----------------------------------------------------------------------
伊東鍼灸整骨院
宮城県仙台市若林区清水小路5-6 エステート五橋1103
電話番号 : 022-266-5234


----------------------------------------------------------------------

当店でご利用いただける電子決済のご案内

下記よりお選びいただけます。